分離課税20%と通貨間交換非課税掲げ、業界から期待の声
国民民主党は、暗号資産に関する税制改革を公約に掲げ、支持率アップを狙っている。同党代表の玉木雄一郎氏は20日、Xで「暗号資産を雑所得ではなく分離課税20%にすべきと考える人は国民民主党に入れてください。暗号資産同士の交換時には税金をかけません」と投稿し、この公約の拡散を呼びかけた。
玉木氏は、以前から暗号資産に関する税制改革の必要性を訴えてきた。現行制度では、仮想通貨取引で生じた所得は原則として雑所得に分類され総合課税の対象となり、税率は最大55%になる。
玉木氏の9月4日のXの投稿では、自民党総裁選において「日本の暗号資産に係る税制と規制の見直しも、ぜひ議論してもらいたい」と要望した。
その中で、玉木氏は日本の暗号資産口座数が1,000万を超え、利用者の預託残高も約3兆円に達している現状を指摘。 暗号資産市場を拡大させるために、以下の4つの具体的な政策を提案した。
- 他の金融所得と同様20%の申告分離課税の適用、損失繰越控除(3年間)の適用
- 暗号資産同士の交換時には課税しない
- レバレッジ倍率を2倍→10倍(個人は5倍)に引き上げ
- 暗号資産ETF(上場投資信託)の導入
玉木氏は、2017年には世界のビットコイン取引量の50%が日本円で行われていたが、レバレッジ規制の強化などにより、今では1〜3%にまで減少していることを指摘。提案した政策パッケージを速やかに導入すれば、日本市場を世界全体の10〜15%に回帰させることは十分可能であり、日本に数十兆円規模の資産を増やすことにつながると主張している。
国民民主党の公約は、暗号資産業界からの要望とも合致している。
日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の最新データによると、2024年4月末時点で日本の暗号資産口座数は1,014万8,764口座を突破し、預託残高も約3.37兆円に達している。この成長を背景に、多くの投資家や業界関係者は税制改革の必要性を認識している。
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)とJVCEAは、2025年度税制改正要望書を政府に提出。 最大税率55%の現行税制は「国民が仮想通貨へのアクセスや利用を躊躇させる内容」となっており、Web3の発展のためには「税制が最大の障害になっている」と指摘した。
JVCEAの小田玄紀会長は、税制改正の必要性について「市場を育成するため」と述べている。 海外の低い税率と高いレバレッジ倍率が、日本の取引シェア縮小の要因となっている。 日本にWeb3市場を創出し、海外からのWeb3起業家を誘致するためにも税制改正は重要だと小田会長は主張する。
しかし、国民民主党の支持率は現在1.6%(NHK世論調査、2024年10月)と低迷しており、この提案が実現するかどうかは不透明だ。
税制改正要望は、各省庁が財務省と総務省に提出後、与党(自民党)税制調査会が審議し、「税制改正の大綱」を作成、年末に閣議決定される。その後、財務省、総務省が改正法案を作成し、国会での審議が行われる。
国民民主党の提案が実現すれば、2025年度から新しい規則が施行される可能性もある。暗号資産業界と投資家にとって、今後の政治動向が注目される。
関連:東洋大学 泉絢也/ブロックチェーンゲームのNFTや仮想通貨の税金について|取材
関連:BC企業「IndieSquare」、平将明衆議院議員のインタビュー記事を公開