暗号資産交換業の定義明確化、パスキー認証ウォレットサービスは法規制の枠外へ
金融庁は8日、自己管理型ウォレットサービスを暗号資産(仮想通貨)交換業から除外する方針を発表した。この決定は、一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)の照会に対する回答として、経済産業省のグレーゾーン解消制度を通じて公表された。
JCBIは、世界初のパスキーを用いた企業向け生体認証ウォレット開発支援ASPサービス「PassWallet(パスウォレット)」を開発し、ウォレットサービス事業者向けの認証インフラを提供している。同団体は、パスウォレット提供において秘密鍵を取得しないため、「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当しないとする照会書を9月12日に提出していた。
金融庁はこの主張を認め、パスウォレットのような自己管理型ウォレットサービスは、資金決済法第2条第7項に規定する暗号資産交換業には該当しないと判断した。その根拠として以下の点を挙げている:
- サービス提供者が利用者の秘密鍵を保有していない
- 暗号資産の移転に必要な情報を処理するのみ
- 利用者の暗号資産を直接管理していない
この決定により、自己管理型ウォレットサービスの提供者は、暗号資産交換業者としての登録が不要であることが明確になった。メタマスクやファントムウォレットなども自己管理型ウォレットに該当する。
従来、日本ではどのようなサービスが暗号資産交換業に該当するのかが曖昧だったが、今回の発表でその範囲が明確化された。暗号資産交換業は、資金決済法第2条第15項により以下のように定義されている。
- 暗号資産の売買や交換
- それらの行為の媒介、取次ぎ、代理
- 利用者の金銭を管理すること
- 他人のために暗号資産を管理すること
金融庁は、「他人のために暗号資産の管理をすること」とは、サービス提供者が利用者の関与なしに暗号資産を移転できる状態を指すと説明している。
しかし、パスウォレットでは、
- JCBIおよびサービス提供事業者は、ユーザーの秘密鍵を取得しない
- 秘密鍵は、ユーザー識別IDとパスキー識別IDを基に、ユーザーのデバイス内で生成される
- JCBIはパスキー識別IDを取得せず、サービス提供事業者はユーザー識別IDとパスキー識別IDの双方を取得しない
上記のことから、JCBIおよび事業者がユーザーの暗号資産を移転する状態にはないと判断された。
金融庁の見解を受け、JCBIは9日よりパスウォレットの無償提供を開始。企業は簡単にウォレット機能を自社サービスに追加でき、今後の普及が期待される。
今回のケースは、経済産業省の「グレーゾーン解消制度」を通じた初の事例であり、今後も同制度を活用する事業者の増加が見込まれる。
関連:メタマスクの秘密鍵とは?確認・アカウントインポート方法
関連:Phantom Wallet(ファントムウォレット)の使い方【スマホ版】