バイナンス、顧客資産流用疑惑強まる
ロイターは23日、暗号資産(仮想通貨)取引所最大手「Binance(バイナンス)」に顧客資産流用疑惑があることを報じた。同記事によると、バイナンスは顧客資産の「分別管理」を怠り、他事業に流用していたという。
「ジャオ、お前もか!」‥‥ツイッター界隈ではそのような声がささやかれた。“業界天皇”とよばれるチャンポン・ジャオが、FTXサム・バンクマン=フリードとまったく同じ疑惑で追及されたからだ。第一報が業界の飛ばし記事に端を発することまで共通している。
FTX事件では、取引所通貨「FTT」にまつわる不正処理が疑惑の中心となったが、今回もバイナンスの取引所通貨「BUSD」が問題視されている。
疑惑の温床ステーブルコイン
バイナンスのBUSDは「ステーブルコイン」である点で、FTXのFTTとは異なる。
通常はあまり意識されないが、ステーブルコインには以下の3種類がある。
①フィアットバックド
発行元が「法定通貨」(たとえば米ドル、ユーロ、日本円など)と1対1でバックドしているタイプ。
②コモディティバックド
発行元が「コモディティ」(たとえば金や銀など)にバックドしているタイプ。
③アルゴリズムバックド
特定のアルゴリズムやスマートコントラクトによって価値の安定性を実現しているタイプ。
BUSDは①だ。米ドルと1対1でバックドされており、いつでも米ドルによる払い戻しを受けることができる。但し、それは表向きの話だ。今回の疑惑では、BUSDの担保となる米ドルが他事業に流用されていたというからとんでもない。そして、BUSDの払い戻しには、他の一般顧客の資産が流用されていたという。
今回の疑惑の構図は、根っからの「ポンジ」や「蛸足」というわけではない。他の事業での流用がうまくいき、内部告発がなかったとすれば、長期にわたって露見しなかった可能性もある。
一昨日22日に営業を停止したばかりの仮想通貨取引所Hotbitも、ステーブルコインの「ディペッグ騒動」が原因だった。
関連:大手仮想通貨取引所Hotbitが廃業|ディペッグ騒動とは何なのか
顧客資産の「分別管理」が徹底されていれば、このような問題は起こらないはずだが、そうとも限らないのがアメリカの監査制度のずさんさだ。
この点、FTX事件においては、FTX Japanでは分別管理が遵守され、顧客への実害はなかった。日ごろは「口うるさい」と煙たがられている日本の金融庁の面目は丸立ちである。
関連:監査不能を宣言、稀代の善人FTXバンクマンはなぜ闇堕ちしたか?
「ようやく‥‥」の声も
実は、バイナンスの顧客資産流用疑惑は、業界では知る人ぞ知る話で「ようやく」の声もある。今後もステーブルコインと関係の深い仮想通貨取引所には要注意だろう。
※ロイター第一報での「流用金額」はおよそ1,000億円
コメント